朝目覚めると二度寝三度寝と浅い睡眠を繰り返した後、カーテンを開け外に出た。
朝靄に包まれた山々に向かい大きく息を吸い込み、隣設しているレストランにチャイを一杯注文した。
ボーイは部屋の前までチャイを運んでくれる。
ベランダのイスに腰掛け、温かいチャイが体に染み込んでくるのを感じながらのんびりとした朝を過ごした。
チャイを綺麗に飲み干したあとは、チェックアウトの準備をしなければならない。
僕らは夜行バスで次の街、マナーリーへ向かうことにしていた。
まずはシャワーを浴びなければならない。
というか、浴びたい。
というか、浴びたい。
リシュケシュで移動する前に浴びたきりなので、これで2日振りのシャワーになる。
シャワーを浴びチェックアウトを済ませた僕らは、荷物を宿で預かってもらいバグスー村へ出掛けることにした。
前日の曲がりくねった細い山道とは違い、車の行き来もあるしっかりとした山道を進む。
20分ほど歩くと、バグスー村自体にはすぐに着いた。
僕らの目的地は村そのものではなく、さらにその奥にある滝だったので、ひと休みしてから再び歩くことにした。
矢印が示す方向に進むと、目的地なる滝がはるか遠くに見ることが出来た。
なかなか遠そうだ。
滝までも高さの不揃いな階段が延々と続く。
僕らはその道をインド人観光客に混じってゆっくりと歩き出した。
小一時間ほど歩いて滝には辿り着いたのだが、滝との距離が異常なほど近くて5分もたたずにいたらズブ濡れになってしまうほどだった。
一緒に写真を撮ってくれというインド人たちと大撮影会を済ませた後、降り掛かる水から逃れようとその場を後にした。
それからは川の水に足を浸したり、突然のスコールで雨宿りしたりと、のんびり寄り道をしながら宿へと戻った。
その後夕食を済ませ、預けていた荷物を担ぎ、バスターミナルへ向かう。
この街とも、もうお別れだ。
正直なところ、ダラムシャラはもっとゆっくりいたかった。
チベタンが暮らすこの山間の街は、優しい空気に包まれた街だった。
でも、また来ればいい。
今回の目的地はあくまでもラダック。
ダラムシャラへの未練をそう自分に言い訳をし、マナーリーへ向かうバスへと乗り込んだ。
20時頃走り出したバスは、前回同様に容赦のない走りを見せた。
次の目的地であるマナーリーもダラムシャラと同じくらいの標高にある。
標高2000mの街と街を移動する訳だから、曲がりくねった山道がずっと続くバス移動なのは言うまでもなかった。
今回は一番後ろの席を陣取ったので、足を伸ばして横になることが出来た。
だが、一番後ろの問題点は前方の席に比べはるかに揺れることだ。
僕らは揺れと広さを天秤にかけた結果、広さを選んだ。
そんな僕らには、揺れに対しての文句を言う資格などないのだ。
ただし、前回とは比べ物にならないくらいにバスは揺れた。
眠りと、揺れによる苦痛の間を行ったり来たりしながら、もう勘弁してくれというところでバスはマナーリーに着いた。
まだ朝の5時だった。
バス移動の疲れと眠さから、頭が完全に回らない。
バスターミナルに来ていた客引きに言われるがままに荷物ごと宿へと運ばれた。
いつもなら値段交渉も慎重に行い部屋もいくつか見てから決定するのだが、眠さとは恐ろしいものですっかりその宿に宿泊することが決定していた。
しかし、この宿がなかなかのヒットで、眺め良し日当り良しのバルコニー付きの部屋だった。
僕らは部屋に案内されるとすぐに、そのままの格好でベッドへ倒れ込み眠りに落ちた。
10時頃に空腹によって目が覚めた僕らは、街へ食事をしに出た。
ついでにここからレーに向かう為にはいくらくらいかかるのか調べようということになり、旅行代理店へ。
バスの値段と種類を聞くだけのつもりだったが、深夜2時にレーに向かうバスが毎日出ているという。
ここで僕らは迷った。
宿のチェックアウトタイムは昼の12時。
つまり、翌日出発することにすれば、12時から夜中の2時まで14時間もの時間を潰さなければならない。
けれど、今夜出発すれば宿代はもうそもそも一泊分払っているのだから、出発時間のギリギリまで宿にいることが出来る。
リシュケシュ、ダラムシャラ、マナーリーと弾丸で移動してきた疲れも迷う理由としてあったのだが、レーに早く行きたいという想いが強かった。
結果、僕らはその日の夜にマナーリーを出ることにした。
そうと決めたらあとはのんびりするだけだ。
溜まっていた洗濯物を済ませ、日の当たるバルコニーで洗濯物と共に本を読みながらただただのんびりと過ごす。
マナーリーには温泉もあるらしく、そこに足を運ぶことも考えたが、そのような案は全て水に流れ、何もしない一日が過ぎていった。
洗濯物もあっという間に乾き、無駄に一度広げたバックパックに荷物を詰め込んだら、あとは食事を済ませて出発するだけだ。
大急ぎで北上し続けたおかげで、明日の夜には念願のラダック入りだ。
5000m級の高山をこれから3つ越えていくという恐怖と、想像上の世界でしかないラダックの壮大な景色に対する憧れが頭の中をめまぐるしいほどに行ったり来たりしていた。
レー行きのミニバンは僕含めたった12人の乗客を乗せ、猛スピードで走り出した。
さぁ、18時間後には念願のラダックだ。
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